古き良きレトロ喫茶の魅力
無類のコーヒー好きである。コーヒーは私にとって1日の始まりであり、集中する時のガソリンのようなものであり、ホッと一息つきたい時の相棒のような存在である。
日頃のストレスや喧騒から逃れて心を落ち着けたい時、私の足はレトロ喫茶へ向かう。
年季の入った椅子や柱時計などの調度品に囲まれて、店主こだわりの1杯を喫すれば、強張っていた心もほどけ、何もかもがゆったり流れる時の中にとけてゆく。
その宝物のようなひと時と、そこでしか出来ないコーヒー体験が好きだ。
だが、その貴重な心の拠り所が、徐々に姿を消している。
先日、いつか行きたいと思っていた店が既に閉店していたことを知りショックだった。
そりゃそうだ。何十年も続いていれば、建物の老朽化や後継者問題もあるだろうし、昨今の物価高の影響も無視できない。
これは「いつか」なんて悠長に言っている場合じゃない。
明日やろうはバカ野郎。 いつやるの? 今でしょ。(え、古っ´Д`)
ということで、前から行きたかった喫茶店をめぐってきました!
<第2弾>レトロ喫茶のレジェンド名店たち
・カフェ・ド・ランブル
昭和23年(1948年)創業、銀座のコーヒー文化を支えてきた老舗喫茶。
入り口でメニューはコーヒーだけ、禁煙、支払いは現金のみと伝えられる。こじんまりとした店内は昭和の面影を色濃く残していて、ランプの光に誘われるように奥のカウンター席へ。
この時は客の半分が海外の人(おそらく旅行客)で、私の隣にも時間差でアジア系の男性が着席。
何を頼むか、どう注文するか、迷っている雰囲気を隣から感じる。得意のカタコト英語でフォローできればよかったが、なんせ私もいちげんさんで、かつカウンターに座るという慣れない行為のせいで、その男性以上に緊張していた。(なんでだよ´Д`)
ひとまず「ブラン・エ・ノワール(琥珀の女王)」というアイスコーヒーを注文。しばらくして隣の男性も同じものを注文していた。話しかけようかと思ったが、「私も初めてdrinkするけど、you 同じ OK?」とルー大柴顔負けの英語しか浮かんでこず断念。

目の前でマスターがエバミルクを注いで完成。混ぜないで飲んでとのこと。
注文時に甘いですよと言われたが、想像以上にしっかり甘い。濃いミルクと濃厚なコーヒーが口の中で混ざり合い、唯一無二のハーモニー。
これは通常のブレンドも飲んでみたいと追加オーダー。
次第に緊張も解け、マスターのスピーディーで流れるような所作を目の前で楽しむ余裕も。

すっきりしながらも、様々なフレーバーというか、単一的ではない複雑な味わい。ブレンドは濃さが3段階(普通・中濃・濃厚)あり、今回選んだ「普通」はあっさりめだったので、次回は中濃以上を頼んでみたい。
最後に、ちょこっと強面のマスターの「ありがとうございました」の笑顔に、ホクホクした気持ちで外へ。なんか大人の階段を上がったような気分を味わわせてもらった。
(2025年9月訪問)
・茶亭 羽當(ちゃてい はとう)
平成元年(1989年)の創業以来、多くの人に愛される渋谷の隠れ家的な名店。
木の温もりに包まれた店内は時間がゆったり流れ、静かで落ち着いた雰囲気。カウンター奥の壁一面に並ぶ様々なカップ&ソーサーが圧巻。
カフェ・ド・ランブルで身につけた、なけなしの自信を引っ提げてカウンターへ。
やはりそばでプロがコーヒーを淹れるのをチラチラ見れるなんて特等席だ。(なぜチラ見?´Д`)
いや、ガン見したら気分害されるかなと思って。。(だからビビりすぎなんよ)

カップはマスターが選んでくれるんだが、私のイメージってこんな感じなのかなと少し意外だった。
が、しばらくしてハッとした。
これ、今日の私の格好だ。青いインナーに赤いカーディガン。(なんちゅー奇抜な恰好しとんねん)(この組み合わせが許されるのはミャクミャクか くいだおれ太郎くらいやぞ´Д`)
そうか、これはマスターからの粋なメッセージなんだな。アンタ東京のど真ん中でイカしてるで👍と。(絶対違う´Д`)
ていうか、シフォンケーキうま~!スポンジがしっとりしていて、上に塗られた生クリームも絶品。シナモンが良いアクセントになって、フォークが止まらん。正直シフォンケーキは味が淡白な印象でそんな好きじゃなかったんだが、その概念が見事に覆された。
ブレンドは苦味が控えめな分、酸味をしっかり感じる。
豆が新鮮なのか、マスターがペーパードリップで淹れる時、ドリッパーの高さを超えてモコモコ膨らむ泡がまるで富士山のよう。他にもウィンナーコーヒーやミルクティーを手際よく作るマスターの姿はもはや1種のショータイム。許されるなら1日中ぼーっと眺めていたい。(普通に迷惑やろ)
(2025年10月訪問)
・名曲喫茶ライオン
昭和元年(1926年)に産声を上げた渋谷を代表するレトロ喫茶。
扉を開けた瞬間、ふっと空気が変わった。ここはただの喫茶店ではない。
厳かに鳴り響くクラシックの音色とともに、床や壁、天井に至るまで染み込んだ歳月の重みが、訪れる者を静かに圧倒する。13時の開店とほぼ同時に入り、誰もいない2階へ。
誤解を恐れずに言えば、ホーンテッドマンションのほぼ貸切状態。(語弊ありすぎだよ´Д`)
いや、良い意味で雰囲気あるというか。。ホーンテッドマンション大好きなんで。(フォローになっとらん)
一切の撮影禁止で、写真をお見せできないのがつらい。
良心的なお値段のブレンドは、THE 深入りのガツンとした苦味が良い。それをお供に、店自慢の巨大スピーカーから大音量で流れる音楽に身をゆだねる。
ほぼ全ての椅子がスピーカーを向くように設置されているのも面白い。
コーヒーと一緒に供されたプログラムのしおりによれば、毎日異なる曲で15時と19時にコンサート(演奏者が来るわけではない)をしているらしい。それ以外の時間はリクエスト曲を流しているそう。このしおりがまた凝ったデザインで集めたくなる。
それにしても、ちゃんとクラシックを聴くのはいつぶりだろう。まさに芸術の秋である。
誰もいない解放感と素晴らしい音楽に乗せられて、全裸で踊りだしたい気持ちに。(出禁だよ)
冗談はさておき、つかの間のゆったりした休息で心身ともにリフレッシュ。店を出る頃にはなんだかちょっと元気になっていた。
(2025年10月訪問)
・カフェーパウリスタ
創業はなんと明治44年(1911年)!銀座の大通りに面した、日本に現存する最古の喫茶店。
「銀ブラ」という言葉をご存じだろうか。銀座をぶらぶら歩くことだと思っていたのだが、この言葉が使われ始めた当初は銀座でブラジルコーヒーを飲むことを指していたという説もあるとか。
その「銀ブラ」発祥の店と言われるパウリスタを目指し、一人銀座をぶらぶら。
1970年に建てられ再オープンした店内は天井が高く、開放的でクラシカルな雰囲気。
お盆の平日だからか想定外に空いており、一人なのに4人席を勧められる。素直にソファの真ん中によっこいしょと腰を下ろす姿は、中年そのものである。(何の話?)

コーヒーのパウリスタオールドは、香ばしい香りと苦みを抑えたマイルドな口当たり。自家製ケーキとの相性も抜群。
店内に流れるジャズに耳を傾けながらスマホをいじり倒す姿は、令和の中年そのものである。(だからその情報いらん´Д`)
そうそう、レトロ喫茶ではめずらしくWi-Fiあります!
おしゃべりしたり、新聞を広げたり、おのおのが自由に「銀ブラ」を楽しんでいる。老舗でありながら肩ひじ張らずに過ごせるところが、老若男女から愛されるゆえんかもしれない。
(2025年8月訪問)
個人的に、カフェ・ド・ランブルはゆっくりするというよりはサクッとコーヒーをひっかけていくイタリアのバール的イメージ。
名曲喫茶ライオンはゆっくりできるが、音楽の妨げになるおしゃべりは禁止なので、一人時間を満喫したい時におすすめ。
誰かを誘ってのんびりしたい時は茶亭 羽當やカフェーパウリスタへ。茶亭 羽當は入口脇に喫煙専用室があるので、煙草を吸う人にも👍
いつかカウンターで「マスターいつもの」と言える日を夢見て(そこかい)、これからもレトロ喫茶めぐりを続けていきたい。