誰かに淹れてもらったコーヒーはなぜ格別おいしいのか?
これは自論なのだが、本来コーヒーを淹れる(ドリップ)のには時間と手間がかかる。
まず豆を挽き、ドリッパーをセットし、適温(90度前後)の湯を用意する。いざ湯を注ぐ時も決してドバドバやってはならず、ごく少量の湯でコーヒーの粉を蒸らすという高度な工程をはさんだ後、粉の中心から「の」の字を書くように数回に分けて湯を注いでいかねばならない。
気の遠くなる話だ。なんなら「の」を書く前に気を失ってしまう可能性もある。
そのため安全策をとり、いつも市販のドリップバッグを使用しているのだが、それでもうまく淹れられない。
適温の湯とやらを用意するのが難しい上、そもそも「の」が書けないことに気づいた。(は?´Д`)
スミマセン、自分ぶきっちょなんで…
ティファールから直行も良くないのか。注ぎ口が広くて、「の」の字どころか気づいたら入れ終わっている。(ドリップポット買わんかい)
これら数々の困難と面倒を乗り越えた先に、おいしい1杯が待っているのだ。
言ってしまえば、この時間と手間を惜しんだら、その1杯には出会えないということだ。(めちゃくちゃ惜しんでるやつが言うな´Д`)
だからこそ、誰かに淹れてもらったコーヒーは、その手間ひま分も含めて有難く、おいしく感じるのではないだろうか。たとえ、市販のドリップバッグだったとしても。。

レトロ喫茶ならではの魅力
こうした手間ひまやこだわりをより大切にしているのが、私にとっては個人経営の喫茶店のイメージである。ペーパードリップでもネルドリップでもサイフォンでも、彼らがおいしいと思う方法でとびきりの1杯を淹れてくれる。
もちろんチェーン店のコーヒーもおいしいし、行く機会は圧倒的にこちらが多いのだが、、普段と違うコーヒー体験をしたい時やホッと一息つきたい時は自ずと喫茶店に足が向かう。
中でも数年前から地道に開拓しているのが、昭和から続くレトロ喫茶だ。
コーヒーや手作りスイーツの味もさることながら、年季の入った椅子や柱時計などの調度品に囲まれた店内は、まるで昭和へタイムスリップしたかのようなノスタルジックな雰囲気を楽しむことができる。
そこではゆったりとした時間が流れ、時にマスターと客の会話をBGM代わりに、じっくりコーヒーと向き合えるのだ。
また、個人的に深煎りでガツンとした苦味を感じるテイストが好きなのも、レトロ喫茶と相性が良いのかもしれない。
<おすすめ>レトロ喫茶のレジェンド名店たち
これまでの中で、また行きたいと思った店や実際に再訪した店をいくつか紹介します。
始めに断らせていただくが、テレビや雑誌でも取り上げられた名店ばかりなので、ご存じの人も多いかと…。
こすりにこすられた既出の情報を、コーヒーのプロでもグルメレポーターでもない、ただのコーヒー好きぶきっちょアラフォーが独自視点で再こすりさせていただきます。(誰が興味あんの´Д`)
・トリコロール本店
昭和11年(1936年)創業の歴史ある銀座の名喫茶。
今どきはめずらしい回転扉を押して中へ入ると、シャンデリアやレンガの壁、絨毯などアンティーク調の調度品が目を引く店内は、まるでパリやウィーンの老舗カフェ(行ったことないけど)に足を踏み入れたようなワクワク感でいっぱい。
そんな中でいただいくネルドリップのブレンドと、注文後にクリームを詰めるというエクレアの相性は言うまでもなく、これまで食してきた中で最も上品かつ深い味わいだった。
(2020年2月訪問)

・銀座ウエスト 銀座本店
昭和22年(1947年)の創業以来、幅広い世代に愛されてきた洋菓子と喫茶の名店。
テーブルクロスの白と椅子やカーテンの茶で統一された店内は清潔感があって明るく、クラシカルで落ち着いた雰囲気をまとっている。
さすが洋菓子の名店だけあって、スイーツのメニューも豊富。何より衝撃だったのは、ハンドドリップのコーヒーをはじめ、カフェオーレや紅茶などがお代わり自由なこと!
銀座のど真ん中でそんないいんですか~と恐縮しながら、結局5杯ほど飲んだ。お腹タプタプ。
(2022年3月訪問)

・さぼうる
昭和30年(1955年)創業の、言わずと知れた神保町の老舗喫茶。
先に紹介した2店とはガラリと趣が変わり、トーテムポールが出迎える山小屋風の建物は、なんとなくディズニーの「魅惑のチキルーム」を連想させ、入る前からただものではない強い個性と存在感を放っている。
店内も、1階・中2階・半地下とフロアを3つに分けためずらしい構造や、雑多な装飾品や壁の落書きなど、期待を裏切らないユニークな世界観。
席の間隔が近いので隣の会話に耳を傾けつつ、チーズケーキをパクリ。う、うまい!
チーズケーキに夢中になり過ぎて、肝心のコーヒーの味は忘れてしまった…。(何しとんねん´Д`)
(2024年11月訪問)

・古瀬戸珈琲店
昭和55年(1980年)の創業以来、こだわりの炭火焙煎コーヒーや手作りスイーツが味わえる神保町の名店。
広々と落ち着いた店内で目を引くのが、カウンター正面の棚にずらりと並べられた様々なカップ&ソーサ―。なんと客が自由にカップを選べるのだ。
店名にもあるように瀬戸物にこだわっているようで、シュークリームの皿には小さな猫ちゃんが。こういうのほっこりして好き。
自分好みのカップでいただくコーヒーは格別の味わいだった。
(2023年9月訪問)

・珈琲専科 ヨーロピアン
昭和53年(1978年)創業の千葉市のレトロ喫茶。
繫華街にひっそりと佇む、赤い屋根と蔦に覆われた趣のある建物が目印。
扉を開けると、明らかにここだけ流れている時間が違うのを感じる。年季の入った調度品や色褪せた壁、マスター夫婦の醸す空気も相まって、まるで昭和にタイムスリップしたかのよう。
サイフォンで淹れるコーヒーは、熱々の状態で飲めるのも嬉しい。自家製チョコケーキとの相性もばっちり👍
(2025年7月訪問)

5店とも週末などは並ぶこともある人気店だが、個人的にトリコロールや銀座ウエスト、古瀬戸珈琲店は比較的ゆったり過ごすことができた。なので誰かとおしゃべりを楽しみたい時にもおすすめ!
ちなみに、ヨーロピアンは全席喫煙可。私が行った時は誰も吸っていなかったが、壁に電子タバコ3本までOKの張り紙があった。
3本までってなんか遠足のおやつは300円までを思い出しません? 先生!バナナは300円の中に入りますか?!みたいな…。
もしやあれってもう古いんですかね? 私がレトロでしょうか…?
これからも至福のひとときを求めて、レトロ喫茶を開拓していきたい。